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9月24日

2020.09.24 Thursday 15:37 | comments(0) | kpmi0008

『野菜を妙薬として戴く方法』

 写真の左端は、虫に喰われたダイコンです。このようにダイコンが虫に喰われてしまうことは、どちらかといえば、あまり頻繁には起きないことです。そして、この写真からも分かるように、喰い始めたけれども途中でやめた感じが伝わってきます。おそらく、その虫にとっては喰い続けることに、かなりの苦痛を伴ったのでしょう。

 現存している植物の殆どは、虫に食べられないように自ら防虫対策をとっています。ただ、虫のほうも死活に関わる場合は、苦痛を伴ってでも食べるものがいます。特に人間が作り出した野菜は、防虫対策よりも味が優先されて、辛味や苦みや渋味が少なくなるように品種改造されていますから、なおさら虫に喰われやすくなっています。

 さて、植物自身がとっている防虫対策ですが、“有毒成分の元”を作り出し、それを細胞内(細胞質中)に溜めておき、虫にかじられたときにだけ“有毒成分”が生じるようにする方法が一般的です。その有効成分は、高濃度では植物細胞自体にもダメージを与える可能性がありますので、無毒な前駆体の形で保存することになっています。多くの場合、糖の分子をくっ付けて、いわゆる“配糖体”の形で保存されています。

 虫にかじられると、“有毒成分の元”にくっ付いている糖を外す酵素が働き、この段階で初めて有毒成分が生じることになります。その酵素として多く使われているものは、ミロシナーゼ(myrosinase)という加水分解酵素です。この酵素は、普段は働かないようにするために、植物細胞内の液胞中に隔離されて溜められています。そして、虫にかじられて液胞が破られると、有毒成分の元とミロシナーゼが接触することになり、有毒成分が生じるという仕組みになっています。

 大抵の場合、この有毒成分は、ヒトに対しては妙薬として働きます。或いは、良薬、秘薬と言ってもよいでしょう。漢方薬の多くは植物起源であることからも推察できると思いますが、どの植物にも多かれ少なかれ、ヒトにとっての生理活性物質が含まれています。そして重要なことは、それらの多くは、虫にかじられたときに生じるものだということです。

 例えば、これからは大根の季節に入っていきます。おでんのダイコンは美味しいですが、あれは摺り下ろしませんので、内部に生理活性物質が生じていません。せいぜい切り口の表面だけに生じていることになります。ですから、ダイコンを妙薬として使いたければ、摺り下ろしてから5分ほど放置した後に食べるのが最適だということになります。

 ダイコンと同じアブラナ科に属するワサビは、さすがに摺り下ろして使うことが一般的なのですが、それによって生じた生理活性物質は揮発性であり、安定性も決して高くありませんので、時間と共に無くなっていきます。従って、これも摺り下ろしてから5分程度経ったものを食べるのが最適だということになります。

 ニンニクはヒガンバナ科に属しますが、これも摺り下ろすことによって生理活性物質が生じ、これの場合は更に加熱などの処理を行うことによって、他の種類の生理活性物質に変化していきます。逆に、勿体無いと言えるニンニクの使い方は、先に加熱したり酸に浸けたりして、アリナーゼという酵素を失活させてしまうことです。

 以上をまとめて述べるならば次のようになります。野菜を戴く場合、それを妙薬として利用しようと思うならば、先ずは野菜の細胞を壊し、即ち、液胞を壊して内部の酵素を作用させることです。換言するならば、虫にかじられる過程を、人為的に再現してやることです。その最も手っ取り早い方法が、摺り下ろすという行為になります。
 せっかくの野菜を、いきなり湯がいたり、焼いたり、炊いたりしたら勿体無いです。

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