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5月22日

2020.05.22 Friday 11:05 | comments(0) | kpmi0008

『楽器と音楽を得たホモ・サピエンスだけが生き残った』
「音楽はこの世で最良の薬である」第2弾として音楽のもつ深い意味について投稿します。

今日の話は、今から4万年前の話です。4万年前というと、随分と昔になりますから、その様子はすぐには想像できないほどの昔になります。

その頃、人類は、私たちを含めて2種類が地球上に住んでいました。私たちは「ホモ・サピエンス」という種名の人類ですが、その他に、「ホモ・ネアンデルターレンシス(通称;ネアンデルタール人)」という種が、当時はヨーロッパを中心にして住んでいました。

因みに、更に遡って7万年前では、「ホモ・エレクトゥス(以前はピテカントロプス・エレクトゥスと呼ばれていた種)が、アジアを中心にして住んでいました。そのため、この時期であれば、私たちを含めて計3種類の人類が地球上に住んでいたことになります。

今の世は、人類としては私たちホモ・サピエンスだけですから、同時期に別の種の人類が居る世界というのは、なかなか想像しにくいものです。もし、今もネアンデルタール人やホモ・エレクトゥスが近所に住んでいたとすれば、世の中の様子は大きく変わっていたことでしょう。友だち付き合いしている様子を想像してみるのも楽しいかも知れません。

ところが、そのあと私たちホモ・サピエンスだけが生き残り、ホモ・エレクトゥスやネアンデルタール人は絶滅してしまいました。一説には、ホモ・サピエンスが彼らを滅ぼしたのではないかとする考え方がありましたが、これは否定されつつあります。

話を4万年前にまで進めることにしますが、この頃は上述しましたように、人類としては私たちホモ・サピエンスとネアンデルタール人の2種のみが生き残っていました。しかし、まもなくネアンデルタール人も滅びてしまうことになります。この、両人類が生死を分けた原因については、多くの人が興味を抱くところでしょう。そして、私たちだけが生き残った理由を知れば、今後の私たちの生き方を考え直す大きなヒントが得られるかも知れません。

さて、掲載した写真をご覧下さい。左上の写真は、4万数千年前にマンモスの骨で作られた笛、その下のものは、鳥の骨で作られた笛です。次に、中央の写真は、4万年前にシロエリハゲワシの橈骨(とうこつ)で作られた、長さ20cmほどの笛です。下段の写真は、3万5千年前の氷河期にハゲタカの翼の骨で作られた笛です。いずれも、当時のホモ・サピエンスが住んでいた洞窟の中から発見された物です。
驚くべきことに、これらの笛には、音の高さを変えるための指穴が開けられています。従って、当時に既に音階(らしきもの)が作られ、いわゆる“音楽”が奏でられていたことを物語っています。

一方で、同時期のネアンデルタール人の遺跡からは、装飾品や道具類についてはホモ・サピエンスのものと同程度のものが発見されていますが、明らかに笛だと判断できるような物は発見されていません。ここに、両人類における生死の分かれ目があったのではないかと考えられるのです。

ホモ・サピエンスはネアンデルタール人に比べると、体つきが華奢(きゃしゃ;頑丈でない)でした。もし、ネアンデルタール人と1対1で闘争したならば、明らかにネアンデルタール人が生き残るでしょう。或いは、ネアンデルタール人なら一発で仕留めるような動物に対しても、ホモ・サピエンスのひ弱な体では仕留めることが出来ませんでした。そこで、ホモ・サピエンスは集団で活動する方法を採りました。

集団で活動するために集団生活を行うと、中には素晴らしい道具を発明する人が出てきます。他の人は、その人からその道具の作り方を学びます。或いは、効率の良い狩りの仕方や、厳しい寒さを防ぐ方法を考え出す人も出てきますので、他の人は、その人から学びます。これを繰り返すことによって、言語を含めたコミュニケーション能力が急速に発達しました。ネアンデルタール人との知的能力の差を付け始める大きな要因になったのです。現代人が子どもたちを学校に行かせるのも、このことが最大の理由だと言えます。

一方で、集団を維持するためには、それなりの苦労があります。気の合う人ばかりではありません。同じ考え方の人ばかりではありません。ホモ・サピエンスの集団の規模が大きくなればなるほど、この問題も更に大きくなっていきました。

当時のヨーロッパの気候は寒冷でしたので、少なくともそのような地域に住んでいたホモ・サピエンスは洞窟を住居にしていました。ある時、獲った獲物の骨の断片に唇を当て、フーっと息を吹き込むと、それまでに聞いたこともない美しい音が発せられました。そして、その音の美しさを倍増させたのが、全面が凸凹の岩石で出来た洞窟でした。

これを読んでくださっている皆さまの中にも、全面がタイル貼りの浴室で笛やギターなどの楽器を弾いたときの音に感動された方がいらっしゃるのではないでしょうか。カーペットが敷かれた部屋で弾くのと大違いの音が響きます。ただ、全面がタイル貼りの浴室は上下左右の床や壁が並行になっていますので、定在波が生じて音が濁る場合があります。しかし、岩で出来た洞窟の壁には平行面が皆無ですので、音を濁す定在波は発生しません。そのため、純粋に透き通った音のエコーが発生します。洞窟内部が広ければ広いほど、長くエコーがかかります。これが、笛の音の心地よさを何倍にも高めたのです。そして、洞窟の中で集団生活する人々の心を大いに和ませたのです。

笛の作り方は、コミュニケーション能力が高まっているホモ・サピエンスの仲間たちに一気に広がりました。そして更に、ある者は、笛に指穴を設け、閉じたり開いたりすることによって音程が変わることを発見しました。そのやり方も一気に広がり、やがて複数の笛を用いて合奏が行われたことは容易に想像できます。骨の笛は何万年という時代を経て保存されますが、奏でられていた音楽は保存されません。しかし、指穴が設けられているところから考えると、かなり高度な音楽と合奏が行われていたり、合奏によって生じる和音が人の感情をコントロールできることを知ったのだと考えられます。

笛と、笛を使った音楽、合奏と和音による感情のコントロール方法は、地域を越えてホモ・サピエンスの間に広まり、どんどんと発展していきました。これによって、集団が一つにまとまり、心地良い音色と音楽によってストレスが解消され、リラクゼーションによって副交感神経が優位になり、洞窟内に響きわたる音そのものがホモ・サピエンスの全身の細胞に活力を与えたのです。そして、気候が厳しくなったヨーロッパで、ホモ・サピエンスが生き残ることを可能にしたのです。一方、同地域に住んでいたネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスとは異なったライフスタイルを選んだために、気候の厳しさと食糧難を乗り越えることが出来ず、滅びてしまうことになりました。

現代において、ヨーロッパに多く存在する石造りによる教会のホールは、4万年前にホモ・サピエンスが音楽を奏でていた岩の洞窟を、更に発展させたものです。現代において使われている教会に設置されているパイプオルガンは、4万年前にホモ・サピエンスが使っていた笛を、更に発展させたものです。これらは、私たちホモ・サピエンスの生き方の原点を、色濃く受け継いでいるものだと言えます。

このFacebookにおいて、去る4月6日に『音楽は、この世で最良の薬となる』と題する記事をupしました。そこには、上述しなかった音楽の効用の数々を書いていますので、その記事も再度読み直していただければ幸いです。4万年前のホモ・サピエンスも、病気の時には笛などを用いて音楽を聞かせていたため、それによっても絶滅の危機を救われたのではないでしょうか。

以上のように、4万年前という気の遠くなるような太古に笛が作られ、指穴を開けることによって音階が作られ、それによって合奏を含めた音楽が作られました。人類の他の種とは異なり、これこそがホモ・サピエンスの大きな特徴であり、ホモ・サピエンスを現代まで存続させた最大の要因だと言えます。まさしく、神に匹敵する楽器や音楽を、欧米の人々は非常に大切にし、大いに活用しています。私たち日本人もそれを、大いに見習らなければならないのではないかと思います。

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