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9月10日

2019.09.10 Tuesday 16:16 | comments(0) | kpmi0008

『子孫を残すために苦くて不味い物を食べる』

 写真の蝶は、主に日本と台湾の間を、海を渡って長距離移動することで知られているアサギマダラです。この蝶の二つ目の大きな特徴は、ある種の植物の毒を体内に蓄え、天敵に食べられないようにしていることです。

 成虫がよく吸うのは、掲載した写真に見られるフジバカマの花の蜜です。これには、動物にとって肝毒性を示す種類のアルカロイド(含窒素有機化合物)が含まれています。では、それを吸ったアサギマダラは大丈夫なのかというと、それが大丈夫なのです。随分と上手く出来ていると思いますし、フジバカマとアサギマダラに共生関係が築かれていると見ることができるでしょう。なお、このアルカロイドは、雄のフェロモンの前駆物質として必須であることも判っています。

 一方、アサギマダラの幼虫が食べている葉は、キジョラン(鬼女蘭)の葉です。これには、更に毒性が強いとされる種類のアルカロイドが含まれています。ただ、余りにも毒性が強くて苦くて不味いためか、食べようとする葉の部分の葉脈のみを円形に囓(かじ)り取り、そこから白色の乳液を出させると共に、内側の食べる部分に乳液が補充されないように加工します。その後、内側の部分のみを食べていきます。もちろん、アルカロイドは適度に残っているため、それが幼虫の体内にも入ります。しかし、成虫の場合と同様に、幼虫はアルカロイドに耐性を持っているため大丈夫なのですが、鳥などの天敵がその幼虫を食べた場合は、幼虫の体内に溜め込まれているアルカロイドによって痛い目に遭うことになります。

 実際のところ、成虫にしても幼虫にしても、天敵がそれを口にしない限りは毒を溜め込んでいるか否かは判らないような気もしますが、特に幼虫は体色を派手な警戒色にすることによって、見ただけで有毒であることが判るようにしています。また、例え食べられたとしても、その後に毒によって痛い目に遭えば、天敵も学習して二度とアサギマダラを食べないようになるということです。

 このアサギマダラの生き方は、私たち人間に多くのことを教えてくれますが、その中で食餌については次のようなことを感じます。アサギマダラの幼虫は、決して美味しいものを食べているのではなく、大変苦くて不味いものを敢えて食べていることです。子孫を残すために、命がけで有毒な物を食べ、天敵による攻撃から回避しているのです。また、雄はアルカロイドをフェロモンの材料として使います。それらの目的は、自分たちの遺伝子をしっかりと子孫に伝え、絶やさないようにするためです。

 もし、身勝手に、苦く無くて美味しい葉っぱを食べるアサギマダラの幼虫が居たとしたらどうなるでしょうか?天敵がその幼虫を食べた時、いかにも美味しいと感じ、他の幼虫を食べに行くことでしょう。或いは、アルカロイドの入った蜜を吸わないアサギマダラのオスが居たとしたら、フェロモンが作れず、子孫繁栄が出来なくなります。ですから、彼らは例外を作ることさえしません。アサギマダラならば、必ず苦くて有毒な特定の植物のみを摂取するというルールを、全個体が完璧に守っているのです。

 多くの現代人は、このようなものを食べれば子どもたちにどのような悪影響が出るか…、などといったことは殆ど考えずに食べています。ひたすら美味しいものを求め、時間をかけてでも食べに行きます。こんなことが常態化すれば、子孫繁栄が滞るのは目に見えています。もっと、食べることに対して厳しくならなければならないのではないでしょうか。

 

 

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