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6月19日

2019.06.19 Wednesday 10:30 | comments(0) | kpmi0008

『ウイスキーは木の成分で出来上がる』

 この木はコナラ属の一種ですが、日本に生えているコナラ属の樹種とは異なり、米国の北東部やカナダに特に多く自生している「ホワイトオーク」と呼ばれる樹種です。日本に生えているコナラ属ではミズナラが一番近いですが、より一層、葉が羽状に深く切れ込んでいるところが大きな特徴です。

 ところで、現代は木で出来た物が減少する一方です。代わりにプラスチックや金属、或いはコンクリートなどが使われます。そのようななかで、これこそは木でなければならないものがあります。その一つが、ウイスキーを熟成するための樽(たる)でしょう。それは即ち、ウイスキーの樽は、単なる容器ではないことを意味しています。

 国や地域が異なれば、使われる木材の種類も異なってくるのは当然の結果です。近くに良い木が生えているのならば、それを利用するのが最も手間が省けますから…。日本では、日本酒を醸造するための樽には杉が使われますが、例えば米国では、ウイスキーを熟成するための樽にはホワイトオークが使われます。

 掲載した写真の一つに、豪快な炎が出ているものがあります。これは、樽の内面を強烈な炎によって焦がしているシーンです。この場合、焦がす程度によって木の各種成分の変化や溶出度合いが変化し、ウイスキーの出来上がりが随分と異なったものになるということです。そして、焦がす程度が最も強いのは、バーボンウイスキーに使われるバーボン樽です。バーボンウイスキーは北米の代表的なウイスキーですが、原材料にトウモロコシが多く使われていること以外に、内面を強く焦がしたバーボン樽によって熟成されることが最大の特徴になっています。これによって、スモーキーな芳香が強まる…といった感じです。このバーボンの芳香をこよなく愛する人は、結構多いことと思われます。

 バーボンウイスキーの1回の熟成で4年程度使用された樽は、次にはモルトウイスキーなどの他のウイスキーを、更に長年月をかけて熟成する樽として使用されます。新しい樽は木香が強く出ますが、使用年数ならびに使用回数が増えるほど木香は減弱します。これは、そのお酒の香り付けをどのようにしたいかによって、選ぶ樽が異なってくることになります。1つの樽は、平均的には6〜7回の熟成に使用され、総使用年数としては70年程度になるそうです。人間の寿命と同じ程度まで使い込まれることになります。

 「樽は呼吸する」と言われます。樽の中に蒸留したばかりの無色透明なウイスキーの元を入れると、それは樽の板の内部にじんわりと浸透し、更に樽の外側に向かって移動して行きます。樽の外側は貯蔵庫内の空気ですから、湿度が低ければ板に染み込んだウイスキーが蒸発していきます。しかし、逆に貯蔵庫内の湿度が高まった場合、樽の外側から湿気が入り込んできます。樽の中の方が浸透圧が高いため、外からの湿気は容易に樽の内部に向かって移動することになります。このとき、板に染み込んでいたウイスキーも、樽の内側に戻されて行きます。ホワイトオークの成分も染み込んだウイスキーに溶け込んでいますから、一緒に樽の内側に向かって移動し、ついに樽の内面から樽内に放出されることになります。このようにして、ウイスキーにホワイトオークの芳香が付与されていき、ウイスキーが作られていくことになります。

 また、このように樽を呼吸させるために、樽は温湿度変化が普通に起きる倉庫内に設置されて熟成期間を過ごします。樽やウイスキーにとって、季節の変化が大変重要な要素だということになります。樽もウイスキーも、自然界に溶け込みながら成長していく感じです。

 樽が呼吸するという動作は、プラスチック製や金属製では無理です。プラスチックを高度な技術によって木のような性質を持たせることに成功したとしても、プラスチックにはホワイトオークの成分をうまく配合することは不可能でしょう。ホワイトオークの細胞壁の材料の一つであるリグニンは、染み込んできたアルコールによってバニリンに似た芳香を持つ物質に変化します。また、ホワイトオークの細胞内に含まれていた糖類や、タンニンなどのポリフェノールも徐々に変性してウイスキーに溶け込み、ウイスキーの芳香成分として加わります。また樽の焦げ部分からのスモーキーな芳香も、樽が木で出来ているからこその芳香です。

 今晩は、好きな音楽をゆったりと流しながら、グラスにバーボンを注ぎ、樹木の芳香をじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。また、樹木と人間の切っても切れない関係について、思い返してみるのも良いと思います。

 

 

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