5月10日
2019.05.10 Friday 12:10 | comments(0) | kpmi0008
『タケノコは腸内細菌へのプレゼント』
4月の半ばから5月にかけてはタケノコの季節でもあります。モウソウ竹のタケノコは最盛期を過ぎましたが、これからはマダケのタケノコが出てきますので、これも楽しみの一つだと思います。
タケノコの栄養価については皆さんはどのように感じていらっしゃるでしょうか。「あまり栄養価の無いものだけれども、季節の味として美味しいものであるから、昔からよく食べられてきたのでは…」と考えられる人も多いのではないでしょうか。
確かに繊維質と水分は多いですが、単位重量あたりの、いわゆる5大栄養素の含有量が少ないことは事実です。しかし、タケノコには掛け替えのない素晴らしい成分が含まれています。それは、キシロオリゴ糖と呼ばれるオリゴ糖です。
キシロオリゴ糖がヒトにとってどのように役立つのか…? 実際のところ、キシロオリゴ糖はヒトの消化酵素だけでは分解できないようです。「それならば、役に立たないではないか…」と思う人も少なからずいらっしゃることでしょう。しかし、特にビフィズス菌の仲間がこれを分解し、エネルギー源として利用します。また、このキシロオリゴ糖は、ビフィズス菌の増殖スイッチを入れる作用が強いことが明らかにされており、ビフィズス菌を増やすために大変有効であることも分かっています。
ヒトの健康を増進させて長寿を実現させる、いわゆる「長寿菌」と呼ばれる腸内細菌には数種類ありますが、ビフィズス菌はそのうちの重要な腸内細菌です。ビフィズス菌が排出する酢酸などの有機酸は、他の長寿菌のエネルギー源になったり、或いは病原性大腸菌などの病原菌の増殖を抑えてくれたりします。即ち、健康長寿を実現するためには欠かすことの出来ない腸内細菌であると言えます。これを効率良く増やしてくれるのがキシロオリゴ糖であり、それを多く含む食材の一つがタケノコです。
他の成分としては、タケノコを茹でたときに出る白い粉状のものは、アミノ酸の一つであるチロシンです。チロシンはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの合成材料でもありますから、うつ状態を改善したり、集中力を高めたり、ストレスを和らげたり、或いは白髪を予防する効果があるなどと言われています。
更に、冒頭に繊維質の多いことを述べましたが、この繊維質は、正常な免疫機能を得るために欠かせない腸内細菌の仲間(クロストリジウム属の細菌など)を増やすことになりますから、アレルギーや自己免疫疾患の人にとっては大変有効となります。また、それらの腸内細菌の代謝産物である酪酸が大腸内に増えますから、それが大腸上皮細胞のエネルギー源になって、大腸の健康度が向上します。
このように、タケノコはヒトのためというよりも、腸内細菌のために特に重要な食材であると言えます。人間は、「美味しいから食べる」、次には「栄養価が高いから食べる」ということを食事の動機にしていることが多いようですが、「腸内細菌のために食べる」ことを決して忘れないようにしたいものだと思います。