5月8日
2019.05.08 Wednesday 14:15 | comments(0) | kpmi0008
『特にスポーツ選手は亜鉛欠乏性貧血になりやすい』
「貧血」だという場合、大抵の人は「鉄欠乏性貧血」を思い浮かべられることと思いますが、実際には「亜鉛欠乏性貧血」である場合がありますので、常に念頭に置いていただければと思います。
そもそも現代の日本人は平均的に亜鉛の摂取不足であり、厚生労働省によると推奨量の7割程度しか摂れていないことになっています。これはあくまで平均値ですから、人によってはかなりの摂取不足になっている可能性があります。
特にスポーツ選手の場合は発汗による亜鉛の喪失、水分補給のために摂るドリンク中に亜鉛が含まれていないこと、多量の水分補給によって尿からの亜鉛喪失量も増える…、などが重なって、かなりの高頻度で亜鉛不足が生じています。もちろん、スポーツ選手以外の方であっても同様の状況になれば亜鉛不足が加速されることになります。
巷では、スポーツ選手の場合の貧血の主原因は、足の裏などが強く圧迫されることによって赤血球が押しつぶされて破壊されるためであり、その結果として赤血球数が減少する。そして、その対策として鉄剤投与が行われる、ということが一般的になっています。しかし、この場合の貧血の主原因は足裏の圧迫でも鉄不足でもなく、亜鉛不足だということです。
亜鉛が不足すると、なぜ貧血になるのか? これについては、掲載した図中に赤枠で囲ったGATA1という酵素が関係しています。この酵素は亜鉛を活性中心とする、いわゆる亜鉛酵素であり、亜鉛不足ではこれが満足に働かなくなるため、赤血球などの特定の血球への分化が進まなくなることが第一の理由です。また、亜鉛不足によってこの酵素の活性が低下すると、赤血球が出来たとしても、その細胞膜が軟弱であるため、溶血しやすくなることが二つ目の理由です。
一般の方においても「貧血気味だから鉄剤を補給しなければ…」と安易に考えることは危険です。鉄の過剰は多くの組織に鉄の代謝産物を蓄積することになります。従って、貧血の徴候が現れた場合、先ずは亜鉛不足を疑ってみる必要があるということになります。
鉄の場合はフェリチンのような貯蔵タンパク質が存在しますが、亜鉛の場合は貯蔵タンパク質が存在しないため、必要量を毎日補給しなくてはなりません。また、特に亜鉛を失いやすい疾患の場合は、通常量の10倍程度の補給を必要とする場合もあります。
或いは高齢者の場合も亜鉛不足になりやすく、高齢になってから頻発するリウマチや膠原病なども亜鉛の補給によって軽快する場合が多いようです。その他、亜鉛不足は各種の体調不良、知覚異常、情緒不安定、記憶力低下、うつ傾向、皮膚異常、褥瘡、骨粗鬆症、免疫力低下など、高齢化に伴って現れやすい不具合の主原因となっています。
以上のように亜鉛は、非常に大切であるにも拘わらず不足しやすいミネラルの一つですので、意識して多く摂るように心がけたいものです。