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4月4日

2019.04.04 Thursday 13:51 | comments(0) | kpmi0008

モノグルタミン酸型葉酸による過剰症

 『トランス脂肪酸から子どもを守る』(共栄書房)という新刊で妊婦さんが絶対に取ってはいけない危険なものとしてトランス脂肪酸を採りあげましたが、危険なものは他にも多くあります。その中で、今日は葉酸の話をしようと思います。

 葉酸はビタミンの一つに挙げられており、これが不足すると大変なことになるというのは、多くの方がご存じこのとでしょう。また、妊婦さんの場合には要求量が増すため、妊娠を経験された女性であれば、殆どの人が医療機関において多かれ少なかれ葉酸の話を聞かされ、何らかの冊子をもらわれたことと思います。そのせいもあってか、昨今では葉酸の入ったサプリメントの需要がかなり伸びています。そのような実状であるため、今日は「葉酸は必要である」という話はしないことにします。

 葉酸は水溶性ビタミンの一つであるにも拘わらず、上限量が決められている事をご存じでしょうか?葉酸は大変重要なビタミンですが、取り方によってはかえって健康を損なう場合もあるのです。その為今日は、「葉酸の過剰症」に的を絞って紹介できればと思います。

 さて、巷で「葉酸」と呼ばれているものには幾つかの種類があります。その中には、過剰症を起こさないものと、過剰症を起こし得るものがあります。現在、市販されている多くの葉酸サプリメントに使われている「葉酸」は、過剰症を起こし得るほうの葉酸なのです。このことの注意喚起のためにも、次の内容を読んでいただければと思います。

 現在、「葉酸」と呼ばれるものには幾つかの種類(それぞれ異なった化合物)が存在します。最も大きく種類分けするとすれば、次の3種類に分けるのが良いと思われます。1つは、通常の食事によって入ってくるタイプの葉酸。2つ目は、多くのサプリメントに配合されているタイプの葉酸。3つ目は、主に医薬品として利用されているタイプの葉酸です。これらのうち、今日は、多くの人が口にする、1つ目と2つ目の葉酸に限って述べることにします。

 1つ目の、食事によって入ってくるタイプの葉酸は、「ポリグルタミン酸型の葉酸(Folate )」と呼ばれるものです。葉酸分子の本体とも言えるプテロイン酸に「グルタミン酸」が「ポリ」にくっついている、即ち、アミノ酸であるグルタミン酸が複数個結合した構造になっています。そして、このままでは腸管から吸収されない仕組みになっています。「なぜ、そのような仕組みになっているのか?」と聞かれれば、「ヒトの体は葉酸による過剰症を防ぐために、そのような仕組みになった」と答えるのが適切であると思われます。

 そもそも、一般的にはアミノ酸が3個以上繫がったペプチドであっても吸収されますが、葉酸の場合はグルタミン酸が1個、即ち「モノグルタミン酸型の葉酸」になるまでは吸収されない仕組みになっています。このあたりは、生命現象の緻密さや奥深さを感じさせられる部分です。

 では、ポリグルタミン酸のグルタミンを外していくのは何なのかと言うと、腸管の粘膜細胞に存在している酵素(γ-グルタミルヒドロラーゼ)です。このことを裏返して言うならば、葉酸の吸収率は、先ずはこの酵素活性を調節することによって吸収率が適正になるようにコントロールされているということです。ここが大切なポイントです。

 一方で、市販されている多くの葉酸サプリメントに配合されているのは「モノグルタミン酸型の葉酸(Folic acid)」です。このタイプの葉酸が、化学的に言う狭義の「葉酸」ということになり、過剰症を生じる物質だということになります。

 モノグルタミン酸型の葉酸は、食事によって入ってくるタイプのポリグルタミン酸型の葉酸に比べ、約2倍程度吸収されやすいと言われ、更に自然界に存在する天然葉酸とは代謝経路が異なるため、体内で活性化しにくく、本来の働きを果たさない上に、蓄積による過剰症の心配もあるのです。

 臨床的に見た場合、上記のメカニズムによって様々な葉酸過剰症を生じることになりますが、妊婦さんの場合では、2016年にアメリカ・ボルチモアで開催された国際自閉症学会において、米・ジョンズホプキンス大学のダニエル・ファリン博士が、「出産時の血中葉酸値が“非常に高い”母親は、“正常値”の母親に比べ、自閉症児が生まれた確率が“2倍” であった」と、妊娠中の葉酸の過剰摂取が自閉症のリスクを高めることを報告しています。

 私たちが緑色の野菜を食べると、その中にポリグルタミン酸型の葉酸が多く含まれています。それを全て吸収してしまうと葉酸の過剰症になる危険性があります。それを防ぐために、腸管の粘膜細胞は、結合しているグルタミン酸の切り離し具合を、γ-グルタミルヒドロラーゼという酵素の発現量を変化させることによって調節しています。これは、自然界が人体に与えてくれた巧妙な仕組みだと言えます。

 巷には、「○○は吸収が悪い」とか、「○○は吸収率が低い」などという文言がよく使われます。これは、道理が解らない人間が使うフレーズです。生体による調節機能を無視した、人間本位の勝手な解釈の仕方です。正しくは、「吸収が悪い」のではなく、「余分に吸収しないように調節されている」のです。大自然が与えた生命の仕組みを、もっとしっかりと学ぶ必要があるでしょう。

 

 

 

 

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