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3月14日

2019.03.14 Thursday 13:31 | comments(0) | kpmi0008

『桜の香気は大自然からのプレゼント』

 もう少し経つと桜が咲く季節がやって来ます。枯れ木のように見える枝に、いきなり花が咲く植物種というのは、やはり少数派です。多くの植物は、葉を茂らせた後に花を咲かせるわけですから、これはやはり特殊な部類に入ると思います。なぜ花が先かという疑問に対する答えは、偶然にも春に花を咲かせる突然変異が生じ、それが生き延びて子孫を残し続けた結果だということでしょう。
 自然界の生き物たちの姿は、遺伝子変異と各種の選択圧によって淘汰された結果です。そのため、理由や原因を考えても解らないことが多い。だからこそ面白くて、奥が深くて、見ていて飽きないのだと思います。
 裏返せば、人間の思いどおりにはなっていない、人間の想像の及ばないところで生命現象が営まれている…、ということでしょう。解った気になってはいけない。多くの現象は、気の遠くなるような生命の歴史の過程においてランダムに生じたもの。だからこそ、何事も、基本的には細胞の営みに委ねる、という心構えが大切なのだと思います。

 さて、多くの桜は花が散った後に葉っぱが伸びて広がっていきます。その葉っぱの中には、これも桜という生き物が偶然に生み出すことになった、o-クマル酸グルコースという物質が含まれています。この物質は、細胞内の液胞の中に溶け込んでいるもので、いわば桜の排泄物です。排泄物ではあるのですが、抗酸化作用があるため、桜にとってはメリットがありそうです。
 このo-クマル酸グルコースは、桜の葉っぱを揉み潰したり、塩漬けにするなどして液胞を壊すと、液胞外にある酵素によって分解され、更に閉環してクマリンという物質と、くっ付いていたグルコースが遊離します。このクマリンが、桜餅特有の香りです。甘くて美味しそうな香りです。
 クマリンには、抗酸化作用と共に、抗菌作用もあります。そのため、桜餅は劣化や腐敗を免れて長持ちすることになります。おまけに、ヒトにとって何とも言えない甘い香りを感じさせてくれます。

 桜餅は昔からありますが、昔の人がそのようなメカニズムを知っていたはずがありません。しかし、桜の葉を塩漬けにすると良い香りが発生して、それで餅を巻くと、餅も腐らないということを、生活の知恵として会得し、現代まで伝承されてきたのでしょう。
 近年の研究によると、クマリンには他にも多くの生理的作用がみられるということです。クマリンを吸い込むと、抑制的に働いている脳のGABAA受容体の応答を強め、精神の興奮が抑えられて安定し、リラックスできるそうです。

 花が散った後は、桜の葉っぱを1枚拝借し、指で揉みほぐしてしばらくするとクマリンが生じてきます。良い香りとともに、精神が落ち着きますから、ぜひ試してみてください。大自然のからの素敵なプレゼントです。

 

 

 

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