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10月27日

2018.10.27 Saturday 09:10 | comments(0) | kpmi0008

「若い頃の再生能力を保つことが秘訣」

掲載した図は、季刊誌「生命誌」から引用、また、右下の図は京都大学分子発生学講座の報告から引用したものです。
まず上段の図についてですが、これはアメリカ・サンディエゴ野生動物公園が調べた「動物たちのがんと死因との関係」が示されています。即ち、死んだ個体を解剖し、体内に良性腫瘍または悪性腫瘍が有るか否かを調べた結果です。

最初に驚いていただきたいことは、ヒト以外の動物では、驚くほどがんの発生率が低いことです。哺乳類の欄に42%と書いてあるのは、見つかった腫瘍のうちの悪性腫瘍の割合ですから、がんが多いということではありません。それよりも、死んだ3,127個体を解剖した結果、悪性腫瘍が見られたのが、たったの39個体だったということです。パーセンテージとしては1.2%になります。ひとまず、この数字に驚いていただきたいのです。これがヒトならば、がんが原因で死ぬ人は100人中1.2人だということになります。
改めて確認しますが、これは「哺乳類」のデータです。ヒトも哺乳類なのですから、野生動物公園で暮らす哺乳類たちのような生活をすれば、悪性腫瘍が原因で命を落とす率が、このあたりまで低下する可能性が有ると言っても過言ではないと思われます。
では、他の動物の場合も見てみましょう。悪性腫瘍が見つかった個体のパーセンテージは、鳥類も爬虫類も1.2%です。そうすると、この辺りの数字が、陸上動物における平均的な率であると言えそうです。

そして、次に驚いていただきたいことは、両生類の腫瘍についてです。解剖された個体数が他の動物よりも一桁少ないですが、腫瘍が全く発見されませんでした。即ち、両生類はがんに罹らないということです。
このことは、がんを研究している研究者にとっては、がんを防いだり治したりするためのヒントが得られる可能性がありますから、大いに研究が続けられています。今の段階で判っていることは、驚異的な組織再生能力が、発がんを遠ざけているということです。特にイモリは、眼球の水晶体を摘出してしまっても、再び水晶体が作られるようです。足を切断しても、やがて足が生えてきます。心臓を半分切り取っても、脳の一部を切り取っても、元に戻るそうです。まさしく、驚異的な修復能力を持っています。そして、その再生能力(修復能力)が、発がんを遠ざけている最大の理由だろうということです。

ヒトは、高齢になるほど発がん率が高まります。その理由の一つは、組織や細胞の再生能力が低下していくためであると言うことが出来ます。私たちの体は、怪我や病気によって損傷を負った場合、それが殆ど治ってしまうこともありますし、逆に殆ど治らないのではないかと思われることもあります。治り方の程度は、年齢が若い頃ほどよく治り、年老いてくるほど治りが遅かったり治り難かったりする傾向のあることを、多くの方が感じていることでしょう。この、治りが遅くなることが、即ち発がん率を高めてしまうことになるのだと考えられます。
イモリの実験では、高濃度の発がん物質を塗り続けると発がんするようですが、それは体内でも再生能力が比較的低い部分に限られるようです。再生能力が高い部位では、がんらしきものが出来ても、やがて正常細胞によって置き換えられてしまうようです。これが、がんを治す方法の一つとなります。自分の細胞の能力を、若い頃と同じように保つ、或いは、能力が低下してきているのであれば高めてやることによって、発がんを遠ざけることが出来るようになります。絶対にしてはならないことは、この逆のことであって、即ち細胞に毒を与えることです。

ところで、今日から2日間、10月27日(土曜日)〜28日(日曜日)は、杏林アカデミー中級講座(医師向け)を開催いたします。また、多くの医師の方々に受講いただきますが、このようなことを一緒に考え直す良い機会になることを期待しています。

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