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6月7日

2018.06.07 Thursday 15:37 | comments(0) | kpmi0008

『あなたも食べている危険なトランス脂肪酸』

予定どおり、本日発売の週刊新潮に、『食べてはいけない「国産食品」実名リスト 第4弾』と題して、トランス脂肪酸に関する記事が掲載されました。

その記事を既に目にしていただいた方もいらっしゃることでしょうが、その中に、多くの人が日常的に食べているパンに含まれているトランス脂肪酸の含有量を調べ、含有量の多い順にランキングした表が掲載されています。それにはパンの商品名、製造している会社の名前、トランス脂肪酸の含有量が明記されています。該当する会社の方々にとっては、今後の対応をどうするかが大きな課題になっていることでしょう。

ただ、これを読んだ読者の方々の反応が、今ひとつ気がかりです。このようなトランス脂肪酸の含有量をランキングした表は過去にも公表されていますが、相変わらず店先には同様のパンが売られ、多くの方々が何事も無かったように買っていきます。殆ど伝わっていなかったのか…と感じるほどです。
では、パンのほうのトランス脂肪酸含有量が以前よりも減ったのかというと、今回公表された表で1位になった「スナックスティック9本入り」の中には、なんと2.7グラムものトランス脂肪酸が含まれていると記されています。9本と言っても1本はそれほど大きくはありませんから、お腹が空いていれば一度に9本食べることは稀なことでは無いと思われます。それによって、諸外国では禁止されている有害物質を、一度に2.7グラムも体内に入れることになるわけです。

このように、日本という国は、なかなか変われないのです。不都合なことの多くは伏せられ、例え公表されたとしても国が動くことは少なく、何割かの人の記憶に残された事柄も、やがて時間の経過と共に薄れていくのです。しかし、そうやって嘆いていても変われません。そこで、海外では以前から広く公表されているトランス脂肪酸の危険性が、このFacebookを通してでも少しは広まれば良いなと思い、今日は、その一部を簡単に紹介させていただこうと思います。

upした図は英語なので見にくいかも知れませんが、これはトランス脂肪酸の多岐にわたる有害作用のうち、心臓血管疾患のみを採り上げたものです。従って、これはトランス脂肪酸の有害作用のごく一部だと解釈していただけば結構かと思います。なお、引用元は、Trans Fatty Acids and Cardiovascular Disease.(Dariush Mozaffarian, etc. N Engl J Med 2006; 354:1601-1613)です。

図は、トランス脂肪酸が心臓血管疾患を引き起こす機序のうち主なものを4つ選び、細胞レベルでのトランス脂肪酸の作用機序を示したものです。では、左上から順に(A〜D)、ごく簡単に見ていくことにします。
先ず左上の図(A)は、肝細胞に対する影響を示したものです。図中に「Trans fatty acids」と記されているのがトランス脂肪酸です。そして、このトランス脂肪酸が、肝細胞の表面に在る受容体に結合したり、肝細胞内に取り込まれて核内の受容体に結合したりします。そうすると、コレステロールを運ぶ役割をしているリポタンパク質のHDLをVLDLやLDLにする反応が促進されることになります。簡単言えば、俗称「悪玉コレステロール」が増加することになります。
次は図の右上(B)ですが、これは血管内皮細胞に対してトランス脂肪酸が起こす反応が描かれています。トランス脂肪酸は、内皮細胞の細胞膜に組み込まれてしまい、その影響を受けてNADPH酸化酵素(オキシダーゼ)を刺激します。このNADPHオキシダーゼは、動脈硬化の主な原因であることが分かっています。そして、活性酸素(ROS)を増やしたり、一酸化窒素(NO)を減らしたりして、動脈硬化や血管経の収縮をもたらします。
図の左下(C)は、脂肪細胞に対するトランス脂肪酸の影響が描かれています。トランス脂肪酸は、脂肪細胞の表面に在る受容体に結合したり、細胞内に入って小胞体に作用し、小胞体ストレス(ER stress)を高めたり、核内の受容体に働いて遺伝子発現に影響を与えて、最終的に血中遊離脂肪酸濃度を必要以上に高めたり、血中の中性脂肪が脂肪細胞に取り込まれることを抑制したり、炎症反応を高めたりします。これは、動脈硬化のたいへん大きな原因になります。
最後に図の右下(D)ですが、これは単球やマクロファージに対するトランス脂肪酸の影響が描かれています。トランス脂肪酸は、単球などの膜表面の受容体に作用して、起炎物質であるインターロイキン6や、炎症の亢進に働くTNF-αの分泌を異常に増やしてしまいます。これも、動脈硬化の大きな原因になりますね。
以上、本当にごく簡単に紹介させていただきましたが、これはトランス脂肪酸が健康を害したり疾患をもたらしたりする機序のごく一部です。海外では、このような研究が盛んに行われてきていて、その結果が広く公表されています。日本においても、一人でも多くの人が、トランス脂肪酸の有害作用に深い関心をもち、トランス脂肪酸を市場から一掃することが出来る日が来ることを、心待ちにしています。

 

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